レーザートラッカー

真円度とは、円形の形状がどの程度理想的な円に近いかを示す指標です。製品の精度管理や機能保証に欠かせない評価基準のひとつです。

この記事では、真円度の定義や測定目的をはじめ、円筒度・真直度・同心度との違いをわかりやすく解説します。さらに、代表的な測定方法や測定機の種類と特徴、三次元測定機の測定事例をご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

真円度とは?

真円度とは、製品の品質を評価するうえで欠かせない指標の一つです。ここでは、真円度の定義と測定の目的を解説します。

真円度の定義

真円度がどのように定められているのか、日本工業規格(JIS)の定義をもとに見ていきましょう。JIS規格では、真円度は以下のように定義されています。

真円度とは,円形形体の幾何学的に正しい円からの狂いの大きさをいう。

つまり、真円度とは、対象物の円形が理想的な円とどれだけ一致しているかを示す指標です。さらに表示方法は次のように定められています。

真円度は,円形形態を二つの同心の幾何学的円で挟んだとき,同心二円の間隔が最小となる場合の,二円の半径を差 (f) で表し、真円度_mm又は真円度_μmと表示する。

真円度には許容誤差があります。許容誤差とは、製造工程で生じる形状のズレをどの範囲まで許容できるかを示す値で、幾何公差とも呼ばれます。製造方法や製品の形状によって設定されますが、実際の図面では真円度の許容誤差が記載されていないケースも少なくありません。

しかし、真円度は図面表示や精密加工の現場で重視される要素の一つです。例えば、タイヤやホイール、エンジン部品を扱う自動車製品では、真円度が製品の性能や耐久性に直接影響します。また、レンズや反射鏡など精密な形状が求められる部品では、高い円形精度が求められます。

このように、真円度は製品の機能性や安全性を支えるうえで、重要な役割を持つ指標です。

測定の目的

真円度の測定は、製品の性能や組み立てやすさ、耐久性を確保するうえで重要な工程です。特に回転をともなう部品では、わずかな形状の乱れが摩擦抵抗の増加や異音、振動を引き起こします。

また、複数の部品を組み合わせる際も、真円度が確保されていなければ正しくはまり込まず、不良品を引き起こすリスクもあるでしょう。

そのため、真円度を正確に測定することによって部品同士がスムーズに接触し、機械全体の精度が高まります。さらに、摩耗や摩擦を軽減できるため、製品の耐久性向上が期待できます。

他の幾何公差との違い

真円度は幾何公差の一種であり、似たような指標に「円筒度」「真直度」「同心度」があります。ここでは他の幾何公差との違いを詳しく解説します。

円筒度との違い

真円度と混同されやすい幾何公差に円筒度があります。円筒度は、JISで次のように定義されています。

円筒度とは,円筒形体の幾何学的に正しい円筒からの狂いの大きさをいう。

円筒度は主にシャフトなどの棒状の製品に適用される指標です。

真円度と円筒度の大きな違いは、評価対象の範囲です。真円度は「円筒の軸線に対して垂直な切断面の円」に対して適用されます。一方、円筒度は円筒全体の形状を対象とし、縦方向の寸法や軸方向の直線性も含めて評価します。

そのため、円筒度の測定には三次元測定機などの精密な測定機が用いられることが一般的です。なお、図面で真円度と円筒度の両方が同時に指示されるケースはほとんどありません。

真直度・同心度との違い

真直度と同心度も、真円度と混同しやすい幾何公差の一種です。JISでは、真直度と同心度を以下のように定義しています。

真直度:真直度とは,直線形体の幾何学的に正しい直線からの狂いの大きさをいう。
同心度:平面図形の場合には.データム円の中心に対する他の円形形体の中心の位置の狂いの大きさを同心度という。

真直度は、長尺物の反りや曲がりの許容を評価するために用いられる指標です。穴のみに適用されると誤解されがちですが、棒状部品にも適用されます。中心軸からのズレや側面の反り具合を確認する際にも使われるため、用途を正しく理解することが大切です。

一方の同心度は、円柱や円筒の中心軸がどれだけ一致しているかを評価する指標です。スリッターナイフやスコアカッター、カメロン刃などの丸型の刃物でよく用いられます。

真円度と同心度は、どちらも「円形」に関わる指標であるため混同されがちですが、対象や測定方法が異なります。真円度は単一の円形状を測定するのに対し、同心度は複数の円の中心位置のズレを測定​​するものであり、それぞれで使用する測定機にも違いがあります。

真円度の測定方法・測定機

真円度の測定方法には、主に以下の3つの方法があります。

  • 直径法
  • 三点法
  • 半径法

直径法とは、円の直径を複数の点で測定し、真円度を算出する方法です。計算式は以下のとおりです。

真円度=(最大値-最小値)÷2

ノギスやマイクロメータで簡便に測定することができますが、精度はそこまで高くありません。

三点法では、三点マイクロメータを用いて複数箇所を測定します。専用のV字治具などを用いて複数点の変位測定を行い、真円度を算出します。 工業製品のNG品の自動検査に向いています。

半径法は、断面の全周にわたる凹凸情報を取得し、それをもとに真円度を評価する手法です。3種の中で最も精度が良く、JIS規格適合の最小領域法とも相性が良い手法です。

ここでは、真円度の測定で用いられる測定機の種類とそれぞれのメリット、デメリットを解説します。

真円度の測定に用いる主な機器

真円度を測定する際は、目的や求める精度に応じて適切な測定機を選ぶことが重要です。代表的な測定機である「真円度測定機」と「三次元測定機」の特徴を、以下の表にまとめました。

測定機の種類 概要 メリット 注意点
真円度測定機 対象物にスタイラス(ポインティングデバイス)を接触させ、幾何特性を測定する
  • 比較的安価で導入可能
  • 高精度な測定が可能
  • 設定・操作が簡単
  • 大型部品には対応しづらい
三次元測定機 空間中の三次元の座標を測定し、対象物の形状や位置をとらえる
  • カメラ型・レーザートラッカーなど種類が豊富
  • 測定時間の短縮
  • 複雑な形状の測定が可能
  • データの蓄積と解析が容易
  • 設置に広いスペースが必要
  • 導入コストが比較的高い
  • 測定に一定の習熟が必要

各測定機のメリット・デメリット

真円度測定機は測定対象にスタイラスを接触させて、幾何公差を精密に評価する装置です。三次元測定機と比べて、比較的安価で導入できます。1周あたり1万点程度と細かいデータを取得でき、詳細な解析が可能です。また、操作や設定も簡単なため、効率的な測定がおこないやすい点もメリットです。ただし、測定機に載らない大型部品や固定が難しく複雑な形状の部品は測定できない場合もあります。測定物を固定できる三次元測定機であれば、大型部品や複雑な形状の測定にも対応できるでしょう。

一方、三次元測定機は対象物の三次元座標情報を取得し、形状や位置関係をもとに幾何公差を測定します。門型・アーム型・カメラ型・レーザートラッカー型など多様なタイプがあり、複雑な形状の測定にも対応可能です。自動測定機能を備えた機器であれば、短時間で多くのデータを取得し、あとから詳細に解析できるため、測定業務の効率化が図れます。

ただし、いくつかの注意点もあります。例えば、門型の三次元測定機は対象物を載せる底盤が大きいため、十分な設置スペースが必要です。そのため、設置環境に制限がある場合は、導入が難しいケースもあります。また、他の測定機と比べて初期費用や維持コストが高い点や、正確な測定には操作スキルや測定のコツが必要な点も考慮すべきポイントです。

このように、それぞれの測定機には特徴があるため、測定機の導入にあたっては対象物のサイズや形状、作業環境、運用体制を踏まえて慎重に検討しましょう。

三次元測定機での測定事例

ここでは、東京貿易テクノシステムで取り扱う三次元測定機の測定事例をご紹介します。

「Leica Absolute Tracker AT960」は、優れたポータビリティと高精度な測定性能を兼ね備えたレーザートラッカー式の三次元測定機です。

本体には環境ユニットが一体化されており、気温・気圧・湿度などの環境条件を常時モニタリングすることで、外部要因の影響を受けずに安定した測定精度を実現します。実際に、ある設備メーカーでは「Leica Absolute Tracker AT960」の導入により、作業時間を約85%削減し生産性が大きく向上しました。

また、直径12.7mの大型ベアリング組立やパラボラアンテナ設置など、最大22mクラスの大型構造物にも対応できるなど、幅広いアプリケーションで高精度な幾何計測が可能です。

「Leica Absolute Tracker AT960」の詳細については、以下のページをご覧ください。

「Leica Absolute Tracker AT960」の製品詳細はこちら

まとめ

真円度は、機械加工部品や回転体の品質管理に欠かせない指標です。真円度を正確に測定し精度を高めることで、不具合を未然に防ぎ部品の性能を長期的に維持できます。

真円度の測定機を選ぶ際は、対象物の特徴やコスト、操作性などを総合的に考慮することが重要です。東京貿易テクノシステムが取り扱う三次元測定機の中には、現場への持ち運びが可能なうえ、ターゲットを自動でロックオンする機能を備えたモデルもあります。ユーザーの手を煩わせることなくスムーズな測定ができ、作業時間の大幅な短縮につながります。

真円度測定の精度向上や測定効率をお考えの方は、ぜひ東京貿易テクノシステムまでお気軽にお問い合わせください。

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