レーザートラッカー 測定機・ソフト種類別

点を測る三次元測定に欠かせないプローブ。正しい測定結果を得るためには、正しくプローブを使う必要があります。

この記事では、プローブの概要や種類、使用方法などを解説するとともに、プローブの製品例として、Leica T-Probeの仕組みや豊富な機能などをご紹介します。

プローブとは?

プローブは英語で「Probe」と表記し、探る・調べる・精査するなどの意味を持ちます。医療現場では医療機器の患者に直接触れる部分のことを指し、化学では目印の役割を担う物質のことを指します。測定機器分野では、測定や実験などのために測定物に接触または挿入する「針」を指し、三次元測定機の業界においてはタッチプローブという名称で広く認識されています。

接触式のタッチプローブでは「針」の部分をスタイラスと呼び、その先端の形状は実際の針状のものから球形、半球など用途に応じて様々な種類が準備されています。

プローブ測定のことをプロービングと言うこともあります。

プローブに求められる機能

測定器の分野におけるプローブは、「正しく測定をおこなえること」が重要です。そのため、プローブには以下の機能が求められます。

  • 測定対象への負荷が小さいこと
  • 外部で発生したノイズが入り込むのを防げること
  • 測定機へ確実に信号を伝えられること
  • 簡単に扱えること

測定する対象の形状を変化させてしまうといった負荷がなく、必要なデータのみを測定機に送れるプローブであることが大切です。

またスムーズに結果を得るためにも、劣化や摩耗が起こったとしても交換が簡単であったり、補正がおこないやすいなどの扱いやすさも大切になります。

プローブの種類

測定機器に使われるプローブにはいくつかの種類があります。ここでは4種類のプローブをご紹介します。

物理プローブ

物理プローブには、以下の3つの種類があります。

  • タッチトリガープローブ

対象物に直接触れて三次元データを取得します。プローブから出ているスタイラスが対象物に接触、傾斜して信号が出力されます。構造は、検出部が入ったプローブ本体と、スタイラスとスタイラス指示機構部の2つに分けられます。

  • 変位測定プローブ

電気センサーを用いてパーツをスキャンし、得た表面計測データを三次元測定機に中継します。非接触で測定できるため、やわらかく変形しやすい対象物の測定にも利用できます。

  • 近接プローブ

レーザーやビデオ技術を用いてデータを中継します。対象物と接触することなく測定できます。

電圧プローブ

電圧プローブは、オシロスコープと被測定対象を電気的に接続して電圧を測定するために使用します。オシロスコープに表示・測定できるのはプローブを通過した信号だけのため、プローブは測定の質を左右することもあります。

さまざまな測定に対応するため、電圧プローブは大きく受動型と能動型の2種類に分かれています。受動型には高電圧プローブや抵抗プローブ、能動型にはアクティブプローブやFETプローブなどがあります。

電圧プローブは、パワーデバイスを使用したモータードライバ、スイッチング電源などに使われています。

電流プローブ

電流プローブも電圧プローブと同様に、オシロスコープと被測定対象を電気的に接続して電流の測定に使用します。ヘッド部分で電流が流れるケーブルを挟むことで観測できるため、電流計と異なりケーブルを切断することなく使用できます。そのため、設備を稼働したまま電流の測定ができ、業務をストップさせる必要もありません。なお、電流プローブには、受動プローブと能動プローブの2種類があります。

電流プローブは、具体的にはモーターの不過電流、LED照明の駆動回路の評価などさまざまなシーンで活用されています。

特殊プローブ

特定の被測定対象物の測定に特化した設計で作られるのが特殊プローブです。プリント基板の回路測定で抵抗値のバラツキや瞬断を抑えるために開発されたシュアーターンプローブ、電子デバイス信号容量増大に対応するために開発されたゼブラ型プローブなどがあります。

その他、さまざまな測定環境に対応した高周波対応用、高温対応用、大電流対応用プローブもあります。

姿勢認識まで可能なプローブの仕組み

三次元測定機で使用するプローブの仕組みを、Leica T-Probeを例に詳しく解説します。

直線や平面、円、球などを求める際は、プローブ本体から伸び出ている銀の部分「スタイラス」の先端を測定箇所に当てて座標値を取ります。光源であるレーザートラッカーと接続して、離れた場所のワークを測定できます。プローブ中央には小さなリフレクタが埋め込まれており、ここに本体からレーザーを受けて、三次元データの測定をおこないます。Leica T-Probeによるプローブ測定では毎秒1,000点の座標値を取得できます。

先端のX,Y,Zの座標は、T-Probeがプローブの傾き具合、ピッチ、ヨー、ロールの計測をして導き出します。プローブの各所に埋め込まれたLEDから赤外線を発しており、この赤外線をトラッカーに内蔵されたカメラで検知することでプローブの傾き具合が認識され、姿勢認識も可能となります。これにより、先端の三次元座標を求められます。

プローブの正しい使用方法

続いて、プローブの正しい使用方法を具体的に見ていきましょう。

補正をおこなう

せっかく測定をしても、それが正しい結果でなければ意味がありません。正しい測定結果が得られるよう、本番の測定を実施する前に精度確認をおこなう必要があります。

たとえば、TTSのLeica T-Probeは付属の専用ソフトでスタイラスごとに始業前点検を行い、測定前に補正(スタイラスの再登録)作業が必要かどうか確認できます。

測定機と測定物との接続は短めにする

正確な測定結果を得るために、測定機と測定対象物の接続を短くしてください。接続するスタイラスが長くなればなるほど測定結果に誤差が生じやすくなります。必要最低限の短いスタイラスを選びましょう。

プローブは定期的に交換する

プローブを長く使用していると、種類によってプローブ先端の劣化や摩耗が起こる場合があります。

TTSのLeica T-Probeでは、スタイラス先端の形状に応じて超鋼、人工ルビー、セラミックといった素材を使用しています。使っているうちに針の先端が摩耗したり測定対象物の表面素材からの凝着が起こることもあります。定期的に状態を確認し使用期間を決めるなどして、適切な状態のスタイラスを使用することで正しい測定結果が得られます。

プローブでの測定がうまくいかない場合とは

プローブを使った測定が想定どおりにいかない場合に考えられる理由をいくつか見てみましょう。

補正ができていない

プローブを使用する際には事前に補正(スタイラスの登録)をおこないます。作業者が一人であればそれほど問題ないかもしれませんが、複数人が使用する場合は別の誰かが他の装置に合わせた補正をおこなっている可能性や、使っていくうちに最初にスタイラス登録した時の状態に少し変化が起きていることもあります。

それをそのまま使うと正しい測定ができません。あらゆる可能性を考え、始業前点検を行ってから測定をおこないましょう。

測定対象に合ったプローブを使用していない

プローブは測定対象に合わせて選ぶ必要があります。たとえば、接触すると変形してしまうやわらかい素材に接触プローブを使用しても正確な測定データは得られません。変形しやすい素材には非接触タイプを選ぶなど、測定対象に合った適切なプローブを選んでください。

測定方法が適切におこなわれていない

測定方法自体が適切かどうかも確認しておきましょう。プローブ測定時の保持姿勢や時間が適切かどうかなど、少しの違いがデータに誤差をもたらすことがあります。誰が測定しても一定になるような工夫が必要です。各職場でマニュアルを作ってもよいでしょう。

製造業におけるプローブの例・T-Probeの紹介

製造業で使われるプローブの製品例として、Leica T-Probeをご紹介します。

高い精度での計測が可能

T-Probeの計測精度はISO 10360-10に準拠したPSIZE(プローブ寸法)でいうと±50μmになります。実際の現場での測定時は空調や振動といった環境的な影響も精度に大きく影響してきます。

また、Leica AT960には測定可能範囲によって複数のモデルがラインナップされており、同じT-Probeを使ってもトラッカーのモデルによって測定できる距離が異なります。測定範囲や精度についての詳細な情報につきましてはお問合せの上ご確認ください。

以下のこちらの動画で分かりやすく解説しております。

動画の後半(8:30~)では実際のプローブ測定(ポイント計測・穴計測)とCADデータとの照合の様子をご覧いただけますので、ぜひご覧ください。

Leicaレーザートラッカーのご紹介『プローブ計測とは?』

今回ご紹介したT-Probeの詳細は以下リンクから確認できます。

■T-Probe製品ページ

「こういうワークを測るのにも向いている?」

「こんな環境でも使える?」

「〇〇を測るにはどのモデルがいい?」など

ご質問がございましたら、お気軽にお問合せください。

長さ違いの交換用スタイラス

測定ポイントまであともう少しなのに届かないといった時用に、長さの異なる交換用スタイラスを用意しています。必要になれば別の長さのスタイラスにすぐに交換可能です。

キャリブレーション不要

事前にエクステンションや先端ツールを登録し、キャリブレーションをおこなっておけば、測定の途中でツール交換をしても再びキャリブレーションをおこなう必要がありません。

第二の取り付け口

プローブの裏側にもう一か所スタイラス取り付け部があります。状況に応じて取り付け部を変えることで別角度での計測も可能になります。

ポンチン

交換用スタイラスのなかには、対象物に目印をつけるポンチング機能を備えたスタイラスがあります。計測しながらマーキングをし、ここだという箇所でガチンっとポンチすることも可能です。(参考動画:定盤レスでのケガキ!レーザートラッカーを用いたポンチングとは?)

ワイヤレスの範囲

直径最大60m内でのワイヤレス計測が可能です。自由に動きまわって計測できます。ただしワイヤレスの範囲はLeica AT960のモデルにより異なります。

音によるフィードバック

傾けすぎやレーザーが外れるなど計測不可な状態になると、ピーピーピーと音で知らせます。また、目視できない箇所の計測時にうまく測れていない場合に音でフィードバックしてくれます。これにより、計測後確認したらデータが取れていなくてやり直し、という事態を防ぎます。

お好みボタンコンフィグ

プローブの各ボタンは位置変更が可能です。作業内容に合わせて好みの位置に配置できます。

まとめ

ひと口にプローブといっても、さまざまな種類があります。求める測定結果や測定対象物に合ったプローブを選びましょう。

補正やプローブの交換が欠かせません。測定方法も、保持時間や姿勢などが適切であるかチェックが必要です。

Leica T-Probeでは正確なスタイラスの登録と事前の精度確認をおこなった上で、最適な長さや形状のスタイラス選択と正しい姿勢での測定、さらにはソフトウェア側でも適切な設定を行うことにより正しく安定した測定結果が得られます。

また、本体に埋め込まれたLEDから赤外線を発し姿勢認識できるほか、ワイヤレスで使用できるなど、さまざまな機能を備えています。詳しくはぜひ動画でチェックしてみてください

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