レーザートラッカー 測定機・ソフト種類別

対象物の三次元データを得るために使う三次元測定機は、計測の対象物や目的によって測定方式がそれぞれ異なります。

この記事では、三次元測定機の概要や基本的な使用方法、正確に測定するためのポイントなどを解説します。

三次元測定機とは?

三次元測定機とは、縦・横・高さの三次元座標(X,Y,Z)を測定し、対象物の立体形状や部品同士の位置、寸法を高精度に測定するための装置です。三次元測定機には、先端に接触子(スタイラス)がついたプローブを測定対象物に当てて測定する接触式と、対象物にレーザー光や複数の縞模様パターンを照射して対象物の三次元座標を測定する非接触式の2種類があります。

三次元測定機についてより詳しく知りたい方は以下のページもご覧ください。

三次元測定機について知る

三次元測定機でできること

三次元測定機ではさまざまな計測やデータの取得ができます。正しく計測するためにも、どのような場合に接触式が適しており、どのような場合に非接触式が適しているか、それぞれ把握しておくことが大切です。

ここでは、三次元測定機の主な活用方法について紹介します。

寸法・角度計測

寸法・角度計測では、測定対象の平面、円錐などの要素をメニューから選択して最低測定点数の測定をおこないます。得られた三次元データの結果から寸法や角度などが導き出されます。接触式・非接触式どちらでも計測可能です。

より正確な寸法を得るにはプローブなどを用いた接触式が、全体形状も含めた寸法の計測には非接触式が適しています。測定方法によっては真円度(円の形がどれだけ完璧な円に近いかを示す指標)や平行度(物体が指定された平面や直線に対して平行かどうかを評価する指標)なども計測可能です。

輪郭形状観察・検査

非接触式は対象物表面を広範囲で撮影し、接触式はペン型の入力装置であるスタイラスなどを用いて、表面形状の観察や検査をおこなうことができます。

輪郭形状観察では、三次元測定機で取得した精密な表面形状のデータを拡大して形状を観察します。凸凹の深さも含めた表面の粗さを正確に計測するには接触式が適しています。

輪郭形状検査では、得られたデータを設計時の3DCADデータと重ね合わせ、データにどれだけズレがあるかをカラーマップなどで可視化します。カラーマッピング上では、プラス方向へのズレは赤、マイナス方向へのズレは青などのように色分けされて表示されます。

三次元形状データの取得

三次元測定機を用いれば、非接触式でも接触式でも三次元形状データを取得できます。

広範囲を撮影してデータを得る非接触式は複雑な形状の計測に向いており、時間もそれほどかかりません。一方で、接触式は形状が複雑になればなるほど測定点数が増えるため時間がかかることもあります。

計測結果をもとに構築した三次元形状のポリゴンデータはSTL形式などの汎用的な形式で保存でき、ほとんどの3Dプリンターや3DCAD用ソフトウェアで読み込めます。

リバースエンジニアリングでの活用

すでに存在する実物から3Dデータを得る「リバースエンジニアリング」では、複雑な形状の計測をおこなう場合が多いため、非接触式の三次元測定機が適しています。

取得した3DCADデータを3DCADソフトで読み込んで編集することも可能です。

内部構造観察

サブミクロン三次元X線顕微鏡(XRM)やX線CT装置などを使用すれば、対象を傷つけずに内部構造の観察が可能です。X線などの放射線でスキャンして内部構造を画像化します。

X線を通さない、厚みがあるなど素材によっては、ノイズが発生する場合もあります。

三次元測定機の使い方

続いて、三次元測定機の使い方を確認しておきましょう。

STEP1:事前準備をおこなう

対象物をあらかじめ測定室に置き、室温にならしておきます。時間は最低でも5時間、室温は20℃程度にすることをおすすめします。これは熱膨張による誤差を少なくするためです。

また、三次元測定機は精密機械ですので、測定対象物の油分や汚れは測定前に落としておくようにしましょう。

測定対象物がやわらかすぎたり奥まった形状の場合は、接触式では測定できない場合があります。また、表面に光沢のある素材は非接触式では測定できない場合があります。そのため、測定可能な対象物かどうかも事前に確認しておきましょう。

その他、測定機の可動部が正しく動くかなども忘れずに確認しておきましょう

STEP2:キャリブレーション(初期設定)をおこなう

次に、誤差を取り除いて適正な値を求めるために三次元測定機のキャリブレーションをおこないます。
他の測定者が別の装置に合わせてキャリブレーションをおこなっている可能性や、経年劣化によりプローブの形状が変化している可能性があるため、基本的に毎回使用前に確認します。

プルーブを用いる場合は、スタイラス(接触子)のキャリブレーションが必要になります。
スタイラスのキャリブレーションは、球中心座標の認識と球直径の設定のためにおこなわれます。

スタイラスにはさまざまなサイズがあるだけでなく、同一製品であっても直径に誤差があったり、摩耗で誤差が生じたりする場合があります。
この誤差を考慮し、どのようなサイズのスタイラスを使っても同じ結果を得るためには、対象物に触れている点と球の中心座標までの半径を演算する必要があり、スタイラスの球直径の設定が不可欠です。

プローブのキャリブレーションについては、こちらも参考にしてください。

キャリブレーションとは?校正との違いやロボットキャリブレーションについて解説
点を測る『プローブ計測』とは?三次元測定の基本を知る!」

STEP3:位置合わせをおこなう

位置合わせ(アライメント)とは、対象物を置く向きと基準座標の向きを合わせることです。
三次元測定機には、測定対象物に設定されたワーク座標系と機器が持つ固有の機械座標系の2つがあります。しかし、装置に規定されている座標の基準軸や基準面に合わせて測定対象物を完璧に置くことは難しい場合があります。

測定対象物が本来の座標系に対して傾いていたり、対象物が大きく形状も複雑である場合、それを適切な位置に正確に合わせることは難しいでしょう。

そのため、それぞれの基準軸や基準面はズレてしまうものと考え、そのズレの修正をおこなうのが位置合わせの工程です。

STEP4:座標軸を設定する

ワーク座標軸を設定するには、基準面・基準線・原点の3つの情報が必要です。基準面は平面で、その面に垂直な方向がZ軸です。一般的に基準線となる直線はX軸で、この直線に横方向に垂直なのがY軸です。

原点は、X,Y,Z軸すべてが0になる点である場合と、直線2本がクロスする仮想の交点を指定する場合もあります。この3つを決めることでワーク座標軸の設定が完了します。

STEP5:測定をおこなう

三次元測定機は、座標値の集まりから平面、線、円などの要素を最小二乗法を使って求めます。最小二乗法は各測定点の誤差の二乗の和を最小にする最も確からしい関係式を求めるものです。

測定は、あらかじめ登録されている要素をメニュー上で選択してからおこないます。
各要素の最低測定点は、例えば直線なら2点、平面や円は3点、球は4点と設定されています。この最低測定点を満たすようにスタイラスを接触させて測ると、要素の測定ができます。
要素同士を組み合わせることで、寸法や角度だけでなく、輪郭形状など複雑な測定結果も導き出されます。

接触式と非接触式で測定方法が異なり、それぞれの測定方法は以下のとおりです。

接触式の
測定方法
非接触式の
測定方法
各要素に設定された最低測定点を満たすようにスタイラスを接触させて測定します。直接測定するため高精度な結果が得られます。 対象物に直接触れることはなく、高性能カメラやレーザーを使って「点」ではなく「面」の測定をおこないます。得られたデータから立体形状を構築します。

立体形状がない場合の計測方法

円筒や球のような立体形状の要素もありますが、円や直線のように立体形状がない要素もあります。

例えば、円のように立体形状がない場合、測定するポイントを指定したとしてもZ値(垂直方向の値)を揃えて測定することは難しいでしょう。そのため、測定ポイントを平面方向に垂直移動させて平面上に投影します。これにより、Z値が揃うため正確に測定可能になります。

このとき、測定の際に投影される平面を「基準面」もしくは「投影面」と呼びます。

三次元測定機で正確に測定するためのポイント

三次元測定機を導入しても、正確な測定データが得られなければ意味がありません。正確に測定するポイントをチェックしておきましょう。

接触式と非接触式の特徴を把握する

三次元測定機には接触式と非接触式があり、対応範囲が異なるため、測定対象物によって得意不得意があります。接触式はプローブなどを使って対象物に接触させて三次元データを得ます。そのため正確なデータが得られ、穴の深さなどの測定も可能ですが、接触すると変形してしまうものには向いていません。

一方、非接触式はレーザーやカメラを使用して表面形状を面で測定します。一度に広範囲を測定できますが、レーザーやカメラでは確認できない深い穴などの測定には向いていません。

それぞれの特徴を知り、適切な三次元測定機を選びましょう。

定期的にメンテナンスをおこなう

測定時に誤差が生じないよう、定期的にメンテナンスをおこなう必要があります。

まずは、測定現場の環境を整えることが大切です。オイルミストや粉塵が発生していないかを確認するほか、扱う対象物や機種によっては温度や湿度を一定にしておく必要もあります。

測定機が正しく測定できているかを確認する校正(キャリブレーション)も定期的におこないましょう。校正とは測定機の精度、動作、機能を確認する作業で、測定結果だけでなく、間接的な製品の品質保障にもつながります。校正作業をおこなうタイミングはJISやメーカーが定めたものを一つの基準としつつ、使用頻度などに合った作業間隔を定めましょう。

機器の操作スキルを向上させる

三次元測定機の使用には高度なスキルが求められるため、使用者のスキルを向上させることも重要です。扱い方によっては破損してしまい、高額な修理代金が発生する恐れもあります。

業務を進めるなかでスキルアップを図るのも一つの方法ですが、製品を提供するメーカーが開催する講習を受けるという方法もあります。各測定機の特徴や、使いこなす方法、誤差が出る要因、評価方法などを知ることができたり、習熟度に合わせた講習をおこなっているケースもあります。

TTSの三次元測定機をご紹介

最後に、TTSが提供する三次元測定機をご紹介します。

AQROS-Scan

AQROS-Scan(アクロス-スキャン)はハンディタイプの非接触3Dスキャナです。Wi-Fi通信と内蔵バッテリー搭載によりワイヤレスで使用でき、コンパクトで持ち運びやすいため操作性にも優れています。光沢物に対してもノンスプレーで測定可能です。ターゲットマーカーレスでの測定にも対応しています。

測定範囲はワンショットあたり最大600x550mm。測定スピードは1秒あたりAQROS-Scan Uで3,000,000点、AQROS-Scan Eye+で1,350,000点です。

AQROS-Scanについては以下のページでより詳しくご紹介しています。

AQROS-Scan製品詳細ページ
※AQROS-Scan Eye+の機能であり、専用の環境下での使用可能。

Leica AT960

Leica AT960はポータビリティとさまざまなアプリケーションにより高精度計測を実現するレーザートラッカーです。

一般的なリフレクタ計測に加え、ハンディタイプスキャナー(3タイプ)による非接触三次元形状計測、ワイヤレスプローブT-Probeによる三次元寸法計測が可能です。マニュアル計測だけでなく、計測の自動化(計測自動化・組立自動化)やロボットキャリブレーションまで幅広く対応しています。

計測範囲(直径)はリフレクタ計測では12〜160m、T-Probe計測は10〜60m、AS1スキャナ計測は10〜60mです。リフレクタ計測時の計測レートは1秒あたり3,000ポイント、計測出力レートは1,000ポイントです。

Leica AT960については以下のページでより詳しくご紹介しています。

LeicaレーザートラッカーAT960製品詳細ページ

VECTORON

VECTORON(ベクトロン)は7つの関節による柔軟な取り回しで自由度の高い計測を可能とした多関節型三次元測定機です。非接触式・有接触式の両方に対応しています。
入り組んだ形状構造や高低差のある測定対象物でも測定できることから、これまで民間の自動車製造業や重工業、製造現場だけでなく官公庁などさまざまな業界で活躍しています。

また、多様な有接触プローブをそなえており、深い円筒の底も測定できます。座標をつなぐ機能やレーザートラッカーとの連動により、測定範囲(2500mm)を超えた大きな対象物の測定も可能です。

測定の際には、搭載された電磁ロックシステムによりボタン一つでアームの位置を固定可能なため、お客様の負担を軽減します。

プローブの最大移動範囲はX軸方向3,500mm、Y軸方向3,500mm、Z軸方向3,275mmです。

VECTORONについては以下のページでより詳しくご紹介しています。

VECTORON VMC8000シリーズ製品詳細ページ

まとめ

三次元測定機にはプローブなどを使った接触式、レーザーなどを使った非接触式などがあり、それぞれに特徴や測定の向き・不向きがあります。
また、正しい数値を導き出すためには正しい使い方をしっかりと理解しておく必要があります。

この記事を参考に、三次元測定機の正しい測定方法、各機種の特徴などを理解して、ぜひ目的に合った三次元測定機を選んでください。

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