測定機・ソフト種類別 リバースエンジニアリング

リバースエンジニアリングは、既存製品や部品を分析・解析し、その構造や設計・機能を明らかにする技術です。製造業をはじめ、医療・建築・文化財の保存など幅広い分野で活用が進んでいます。

近年では、3Dスキャナや三次元測定機の進化により、複雑な形状もより精密にデジタル化・解析できるようになりました。

この記事では、リバースエンジニアリングのメリットや基本プロセス、活用事例をわかりやすく解説します。あわせて、東京貿易テクノシステムが提供する製品もご紹介します。

リバースエンジニアリングとは?

リバースエンジニアリングとは、完成済みの製品やソフトウェアなどを解析し、その構造や機能、動作原理を明らかにする技術やプロセスのことです。通常の開発が「設計→製造→評価」という順序で進むのに対し、リバースエンジニアリングは逆のプロセスとなるため、リバース(逆向き)のエンジニアリング(製造)と呼ばれています。

リバースエンジニアリングをおこなうことで、製品を構成する要素を詳しく解析し、技術的な知見の取得や新たな製造手法の発見に役立てることが可能です。製造業やIT分野をはじめ、建築、医療、セキュリティなど幅広い分野で応用されています。

リバースエンジニアリングのメリット

リバースエンジニアリングを活用する主なメリットを解説します。

開発コスト・期間の削減につながる

リバースエンジニアリングを活用するメリットの一つが、開発コストや期間の削減です。新製品やシステムを一から設計する際、実験や検証を繰り返す必要があり、多くの時間がかかる傾向です。

リバースエンジニアリングの活用により、既存製品の設計技術を参考にできるため、試作品やテストにかかる期間を短縮できます。

その結果、無駄なコストを省き、効率的に開発を進められます。開発サイクルが短縮できれば、製品をより早く市場に投入できるでしょう。

製品の品質向上につながる

リバースエンジニアリングの活用により、既存製品の課題や問題点を把握し、開発プロセスの改善に役立てることで製品の品質を高められる点がメリットです。また、市場に流通する製品と自社製品を比較、分析できるため、自社製品の課題や不具合の要因を特定しやすくなります。

リバースエンジニアリングによって得られた知見をもとに改良を重ねることで、ユーザーの期待に応える高品質なものづくりも可能です。

さらに、解析によって得た情報をもとに自社ならではの工夫を加えて独自性を高めれば、競合との差別化も期待できます。

技術後継者不足の対策になる

リバースエンジニアリングは、技術継承の課題を解消する手段としても有効です。古い製品や長時間運用されてきたシステムのなかには、当時の設計図や仕様書が残っていないケースも少なくありません。

このような場合でも、実物を解析することで構造や仕組みを再現し、設計情報を一から作成できます。実物をもとに製品を再構築できるため、技術継承が難しい現場でも、安定した生産体制を維持しやすくなります。

リバースエンジニアリングのプロセスと技術

リバースエンジニアリングは、製品の内部構造を読み解く一連の技術です。基本のプロセスをもとに、ハードウェア・ソフトウェアの具体的な解析方法を解説します。

基本のプロセス

リバースエンジニアリングの基本のプロセスを、以下の表で解説します。

基本プロセス内容
1.対象物の測定・分析・製品の外装を取り外し、内部を構成する部品を特定する
・各部品の配置・接続関係を詳細に記録する
2.製品分解・設計情報の抽出・製品を分解し、部品の寸法・形状・材質・構造などを技術的な視点で分析する
・構成部品の機能を明確に理解し、製品のメカニズムを把握する
3.設計書・仕様書の作成・設計情報をもとに設計書・仕様書を作成する

リバースエンジニアリングでは解析対象となる製品を選定し、上記のような基本プロセスに沿って作業を進めます。次に、対象がハードウェアの場合とソフトウェアの場合の、それぞれの具体的な手法を見ていきましょう。

ハードウェア

ハードウェア製品の場合は、製品内部の寸法や設計データを取得するため、3Dスキャナや三次元測定機、CTスキャンなどの最新技術を活用してデータを収集、分析します。

3Dスキャナ

3Dスキャナとは、立体的な対象物をスキャンして3Dデータとして取り込む装置です。対象物にレーザーなどの光を当て、空間の3方向の座標(X・Y・Z)を取得します。

測定スピードが速いのが特徴で、自動車部品や工業製品など、比較的大きな対象物の測定に適しています。取得したデータは、設計の見直しや互換性検証、新製品の試作など、さまざまな場面で活用可能です。

また、手作業では難しい高精度の測定を効率よくおこなえるため、開発工程の短縮が期待できます。

3Dスキャナの種類や測定の仕組みなど、詳しい内容は以下の記事からご覧ください。

3Dスキャナとは?種類や測定の仕組み、具体的な使い方を解説

三次元測定機

三次元測定機とは、対象物の形状や寸法をX軸・Y軸・Z軸から三次元座標で計測する装置です。3Dスキャナよりも高精度で測定できるため、精密機械や金型など寸法精度が求められる製品の測定に活用されています。

三次元測定機には、主に接触式と非接触式の2つのタイプがあります。2つの違いは以下のとおりです。

接触式プローブと呼ばれる測定針を対象物に接触させ、座標情報を取得する方式
非接触式レーザーや光学センサーを利用し、対象物に触れずにスキャンする方式

接触式は、比較的シンプルな形状の測定に向いています。一方、非接触式は複雑な形状でも測定しやすい点が特徴です。

三次元測定機の種類や測り方のポイントは、以下の記事で詳しく解説しています。

三次元測定機(CMM)の使い方は?正確に測るためのポイントをご紹介
三次元測定機の商品一覧はこちら

CTスキャン

CTスキャンとは医療用CTスキャンと同様に、X線を用いて対象物の外部および内部形状を三次元データとして取得する測定機です。対象物を破壊せずに内部を可視化でき、複雑な構造を正確に把握することが可能です。

特に、精密機器や医療機器など繊細な内部部品を多く含む製品の解析に適しており、開発や検査の現場で広く利用されています。

CTスキャンで取得した3Dデータをもとに内部の不具合を短時間で把握できるため、迅速な問題解決につながります。

ソフトウェア

ソフトウェア製品の場合は「逆アセンブル」と「逆コンパイル」と呼ばれる2つの手法で、技術情報を取得します。2つの手法を詳しく解説します。

逆アセンブル

そもそも「アセンブル」とは、「アセンブリ言語(プログラミング言語)」をコンピューターが理解できる「機械語」に変換するプロセスを指します。「逆アセンブル」とは、機械語で書かれた実行ファイルをアセンブリ言語へ変換する技術です。

アセンブル処理とは逆のプロセスを実行することで、元のソースコードがなくてもソフトウェアの動作ロジックやアルゴリズムなどの詳細情報を把握することができます。ソフトウェアの脆弱性の特定や、既存プログラムの改良、セキュリティ対策の強化など、さまざまな用途に適した手法です。

逆コンパイル

「コンパイル」とは、人間が書いたプログラミング言語のソースコードを、コンピューターが理解できる機械語に変換する作業を指します。一方で「逆コンパイル」はその逆の処理をおこない、コンパイルされたソフトウェアから元のソースコードを明らかにする技術です。

逆コンパイルでは、バイナリファイルを解析してC言語やJavaなどの高レベルなプログラミング言語に変換します。逆アセンブルより抽象度の高い情報が得られるため、複雑なソフトウェアの解析や改修に適しています。

このような特性から、設計書のないソフトウェアの解析や、競合製品の分析の際にも役立つ手法です。

リバースエンジニアリングの注意点

リバースエンジニアリングは、原則として合法な手法として認められていますが、場合によっては法律に抵触する可能性があります。具体的には、意匠権などの知的財産権や、不正競争防止法に抵触するケースが考えられます。

そのため、関連する法律は事前に理解しておくことが大切です。

意匠権物・建築物・画像などのデザインを保護する権利
不正競争防止法事業者間の不正競争の防止を図り、公正な競争を確保するための法律

参考:特許庁|意匠制度の概要
参考:経済産業省|不正競争防止法の概要

既存の製品を改良して販売する際は、他社の知的財産権を侵害するリスクがあります。特に、他社が保有する特許技術を無断で利用して製品を販売すると、特許権や知的財産権の侵害に該当するおそれがあります。

研究目的ならば問題になりにくいものの、実際の製品開発や販売に活用する際は、関連法規に抵触していないか事前に確認しましょう。

リバースエンジニアリングの活用事例

リバースエンジニアリングの実際の活用事例をご紹介します。

池上金型工業株式会社様

プラスチック射出成形用金型の製造を専門とする池上金型工業株式会社様では、従来から金型や成形品の測定に三次元測定機を活用していました。しかし、対象物に複数の測定ポイントがある場合、測定に多くの時間がかかるといった課題があり、三次元の非接触式のCCD測定機(センサーを使用した測定機)を新たに導入しています。

CCD測定機の導入をきっかけに、金型製造の知見を生かした多分野展開を目指し、リバースエンジニアリング事業を立ち上げました。

同社では、ポリゴンデータをCADデータに処理する工程で「spScan」を使用しています。「spScan」では広い面は緑、折れ曲がっている箇所は赤のように形状の凹凸やエッジ部が色で表示される仕様です。

ソフトの扱いやすさにより、作業時間だけでなく、技術者の育成期間の短縮にもつながっています。

詳しくはこちらをご覧ください。

池上金型工業株式会社様

Apex株式会社様

オリジナルの自動車後付けパーツブランド「Apexi」を展開するApex株式会社様は、幅広い自動車メーカーに対応できる高い技術力と品質で、多くのファンを持つ企業です。

近年では、3D技術を活用した新規事業として、高精度のリバースエンジニアリング事業に取り組んでいます。当初は、ソフトウェアの設定や作業に工数がかかり、納期の見通しが立てにくい状況が続いていました。

そこで「spScan」を導入し、ソフトウェアによる自動設置と技術者による手動設定を細かく調整したことで、モデリングまでの時間を約1/5ほどに短縮しています。単価の引き下げも可能となり、顧客への還元も実現しました。

さらに、工数の可視化により、業務効率と収益性の向上が両立しています。

詳しくはこちらをご覧ください。

Apex株式会社様

TTSが扱うリバースエンジニアリングソフトのご紹介

東京貿易テクノシステム(TTS)が扱うリバースエンジニアリングソフトをご紹介します。

リバースエンジニアリングの手法

リバースエンジニアリングにはいくつかの手法があり、ここでは代表的な3つの手法をご紹介します。

  • Auto Surface(オートサーフェス)
  • Surface Modeling(サーフェスモデリング)
  • Solid Modeling(ソリッドモデリング)

それぞれのメリット、デメリットを以下の表で解説します。

手法メリットデメリット対応ソフト
Auto Surface(オートサーフェス)・オート面生成ソフトウェアが計算し、ほぼ自動で曲面を作成する
・スキャンしたデータに面を貼り付けるだけで3Dデータができる
・データの修正や編集がおこなえない分、手間がかからず処理が速い
・測定対象物にキズや欠けがある場合など、ポリゴンデータの補正作業に時間がかかる
・小さい面が連なった構成データのため、あとからCADシステムで編集するのが難しい
・細かい連続した面で構成されており、エッジや円弧が表現しづらい
spScanPolyWorks|Modeler™
Surface Modeling(サーフェスモデリング)・面生成に特化している
・複雑な形状のモデル作成が可能で、CADと同等の面構成のデータを作成できる
・部分的な修正はCADシステムで対応できる
・サーフェスモデルからソリッドモデルの作成ができる
・複雑な形状や細部にも対応できる
・面データのため処理に時間がかかる場合がある
・「押し出し」「回転」「スイープ」などの機能があり、モデリングスキルが必要になる
・面で構成されるので対象物の体積や質量などの計算はできない
spScanGeomagic WrapPolyWorks|Modeler™
Solid Modeling(ソリッドモデリング)・質量や重量の情報によりリアルな3Dデータを作成できる
・内部に三次元データを持つため実際の材料のように設計変更が容易にできる
・ソリッドモデルの表面だけ残してサーフェスモデルに変更できる
・一度に複数の面や形状を作成するため、自由曲面や複雑な形状には不向き
・データ量が大きく、処理に時間がかかる
Geomagic Design XPolyWorks|Modeler™

Auto Surface(オートサーフェス)とは、測定データに対して境界線を引き、境界線をもとに測定データにフィットした自由曲面形状を作成する手法です。スキャンしたデータをそのまま利用できるため、寸法測定や細部まで細かく3Dデータ化が必要ない部品解析などに適しています。

Surface Modeling(サーフェスモデリング)とは、測定データを解析してからベースになる面を作成し、面を延長しソリッドモデルを作成してから曲面を付けていく手法です。輪郭や方向をコントロールでき、意匠設計や自動車のボディーデザインなど、複雑な表面形状を複数持つ形状の作成に適しています。

Solid Modeling(ソリッドモデリング)は、対象物を三次元構造で再現する手法です。測定した三次元データの断面を切り、輪郭の折れ線に対して自動でスケッチします。次の工程で近似の直線や曲線・円弧を作成し、スケッチを押し出したり回転させたりしてモデリングします。

仮に直方体を製図する場合、サーフェスモデルでは中身が空洞ですが、ソリッドモデルでは体積など内部情報の再現が可能です。

spScan

「spScan」は、非接触式三次元形状測定データからNURBS曲面を作成するリバースエンジニアリングソフトウェアです。特長として、点群データを穴埋めや間引きなどの自動修正を加えながら最適にポリゴン化できることが挙げられます。

オートサーフェス機能で曲面からポリゴンへのフィッティングも可能です。さらに、ポリゴンと曲面の誤差解析カラーマップを使えば、ひと目で誤差を確認でき、修正にかかる工数を大幅に削減できる点もメリットです。

「spScan」には、サーフェスモデリング機能も搭載されています。サーフェスモデリング機能により、CADに近い面構成で精度と品質の高い自由曲面の作成ができます。そのため、デザイン形状や金型などのモデリングに最適です。

詳しくはこちらをご覧ください。

■「spScan」の製品詳細はこちら

Geomagic Wrap

「Geomagic Wrap」は点群データをもとに、3Dポリゴンデータやサーフェスモデルを生成するソフトウェアです。作成したデータは、下流工程のエンジニアリングや製造、工業デザインなどに活用できます。

「Geomagic」の先進的なサーフェス変換ツールは、高精度の3Dモデルに必要な最新モデリング機能を備えつつ、使いやすさや高い処理能力も追求しています。リバースエンジニアリングのプロセスでおこなわれる繰り返し作業は、スクリプトやマクロで使用可能です。

肉眼で発見できない岩面陰刻や古代の紋様を解析、壊れやすい芸術作品の3Dを活用した修復・再現など、さまざまな分野で活用されています。

詳しくはこちらをご覧ください。

■「Geomagic Wrap」の製品詳細はこちら

Geomagic Design X

「Geomagic Design X」は、履歴ベースのCAD機能と3Dでスキャンしたデータの高度な処理機能を融合したソフトウェアです。

有機的な形状も高精度なCADモデルに変換できる、業界最高レベルの曲面変換機能を備えています。また、既存のCADソフトウェアと互換性のある、フィーチャベース(立体形状を作成する手法)で編集可能なソリッドモデルを作成できます。

詳しくはこちらをご覧ください。

■「Geomagic Design X」の製品詳細はこちら

PolyWorks|Modeler™

「PolyWorks|Modeler™」は、測定部品のポリゴンモデルからカーブやサーフェスなどの最適なCAD要素を抽出し、CADモデリングを実現するソフトウェアソリューションです。

不完全なポリゴンモデルの修正や最適化を自動でおこなうだけでなく、ポリゴンデータのリアルタイム生成ができるポリゴンモデリング機能も備えています。また、優れた精度と滑らかさをもつNURBSサーフェス(平面情報や曲面情報を持つNURBS形状)を、直観的な手法で作成可能です(※)。

詳しくはこちらをご覧ください。

■「PolyWorks|Modeler™」の製品詳細はこちら
※PREMIUMパッケージでのみ可能

まとめ

リバースエンジニアリングは、製造業に関するさまざまな課題を解決するだけでなく、他分野への応用も期待される先進技術です。

用途によって適した手法や用いるソフトが異なるため、自社に合ったシステムを選ぶ必要があります。最適なソフトを選ぶことで、時間短縮だけでなく利益アップにもつながります。

この記事を参考に、ぜひ自社に適したソフトを選びましょう。

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